ヘブンリー・ブルーV
著者:HOCT2001


今日の3時間目はゾエさんの生物かぁ。興味のないことに時間を使うことがもったいなくてしょーがない。だが、ある以上はうけないわけにはいかない。
さて、生物室に行かないとな。ゾエさん時間に厳しいもんなぁ。

 と、廊下を歩いていたら生徒手帳が落ちていた。こんなめったに使わないものなんて誰が落としたのかと思って名前の欄を見てみると『小森 鏡子』と書いてある。
クラス委員長だからまぁ、よく使うのかな?後で返しておかないとな。さて、生物、生物と。

「今日はフナの解剖をするぞー」
 ゾエさんが機嫌よさそうに授業を進めている。

 前から思っていたのだが、フナの解剖はよくてモルモットの解剖はNGという倫理観がわからない。大体フナは魚類だぞ。えらで呼吸しているんだぞ。まったく役に立たないじゃないか。
それだったら俺たちと同じ哺乳類のモルモットの解剖をしたほうが生涯で一度ほどは役に立つかもしれない。
まぁ、高校の生物の授業でモルモットなんかを使ったら動物愛護団体から抗議が来るらしいのだが、フナさんはよくてモルモットさんはダメというのは、単一的な考え方になりそうで気にくわない。
菜食主義者が肉や魚は食べなくてもニンジンさんや大根さはかわいそうじゃないのか、という思想と通じるものがあるな。

「……ず…き」
「和樹!」
「おぉ、飯田、びっくりさせるなよ」
「なんかお前が物憂げにボーっとしていたから声をかけてやったんだぞ。感謝して欲しいくらいだ」
「いやー、お前には及びもしない高尚な考察をやっていたんだよ!!」
「ほー、毎期赤点補習常連男の和樹が高尚な考察とはな。なんだ、言ってみ。どうせエロいことだろ?」
「エロいこと、とは失礼な。そうだな、宇宙のルーツを探るくらいの高尚さだ」
「は?」
「つまり、気にするなってこった。それより解剖、進めようぜ」

 腹から肛門にかけてはもうメスを入れて開けてきているので、中から心臓や肝臓、腸などを取り出し、次々とホルマリンに入れていく。
それから、頭部をはずし、えらを取る。で、えらと、頭部をホルマリンにつけたら実験終了だ。

「各班とも、解剖は終わったかー?」
 全部の班から「はーい」といった声が聞こえてきた。
「じゃぁ、お前らそれの身を焼いて食え」
 はぁ?何言ってんだ?ためしに聞いてみる。
「先生、これどこで調達したんですか?」
 すると、こんなことをほざきやがった。
「近くの沼でつってきたんだが、文句あるか?」
「あんな汚い沼のフナなんて食べられるわけないじゃないですか!!」
「洗えばたぶん食えるぞ」
「その『たぶん』がきになるのですが?」

 すると教室の奥のほうから声が聞こえてきた。
「泉君、そのまま捨てちゃうのはフナさんがかわいそうだと思うよ。カレー粉で味をつければ臭みも抜けると思うし、牛乳につけるのもいいんだよ」

 その声の主は小森さんだった。優しい娘だなぁ。そこまで言われたら食べるしかないじゃないか。

「添本先生の言うとおり食べてみます」
「泉、アルコールランプで焼くからな」

 もう、何も言い返す気がしねぇ。俺の消化器よ、頑張ってくれよ。

 あ、そうだ焼いてるうちに(授業が終わるまでにアルコールランプなんかでフナが焼き終わるかはわからないが)小森さんに手帳返しておかないと。

「小森さーん、ちょっときてー!!」
「何かな、泉君?」
「今日、生徒手帳、落としたでしょ?」
「なんで?なんでわかるの?」
「じゃーん、俺が拾ったんだよ。はい」
「うわー、助かりますぅ、かばんにも服のポケットにもなかったんであせっちゃっていたところでした」
「まぁ、盗む人なんかいないとおもうけどこれからはきをつけてね」
「じゃぁ、お礼に今度泉君が出るサーフィンの大会に応援に行きますね?」
「え、ホント?小森さんが来るとなると練習に力を入れちゃうよ」
「緊張はしないでね、泉君」

 ふ、やっと俺の時代が来ましたよ。基本的にサーフィンの競技大会はプロレベルのものの大会ではないと応援に来る人はいない。
それが女の子が応援に来るなんて嬉しいなんてレベルを通り越して心臓が麻痺してしまいそうだ。しかも、心筋梗塞になりそうな小森さんの一言。
「ついでに、楓も連れて行くよ」

 をを、ついに俺にもソ○ー損保のティアラが頭にのりましたか。そうですか、お客様満足度90%以上で行かないとな。

 となれば、そろそろ自分のボードを自分で削ってみよう。今のボードが気に入らないわけではないんだが、ワックスの、のりが余りよくないんだよな。


 まぁ、そんな話より先にフナを食べないとなぁ。とりあえず口に入れる
確かに牛乳とカレー粉で臭みが取れている。だが、店でこんなもんが売ってあったら店長を殺すだろうな。とゆーか、3回生になったら生物選択しない。
前の授業なんてO-157を培養しよう、なんてやつだったからな。こんな人が先生やっていけるとは教育委員会は結構危ないのかもしれない。




 後日、俺の腹が痛くて大変なことになったがそれがフナのせいなのか因果関係は判明していない。



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